モウモウである。吾輩は稀代の食通を自負する牛ながら、この日は会社帰りに新宿の路地裏で一風変わったラーメン屋「たかはし」と出会った。ふと見上げた看板には「あご出汁専門」と記されており、牛ながらに好奇心がむくむくと湧き上がる。そもそも「あご」とはトビウオのことで、これで出汁を取るとはいささか風変わりな趣向ではないか。

トビウオの出汁とは
「たかはし」の名は、ラーメン通の間で密やかに囁かれる隠れた名店とのこと。ネットの巷では「あごの出汁が衝撃的」「スープが鳥肌もの」などと騒がれている。吾輩のような美食家(自認)にとって、これは見逃せぬ情報でござる。もっとも、牛がラーメンを食すのも妙な話ではあるが、食の探究に種族の壁などあろうはずがない。
店はカウンター席のみ、十人も入れれば満杯という狭さでござる。入り口を開けると、潮風のような香りが鼻をくすぐった。聞けば店主は新潟の佐渡島の伝統的な焼きあご文化に影響を受けているようだ——これはただものではない。

「あご出汁は、海のエッセンスだ」
店主はそう語りながら、丼の中に琥珀色のスープを注ぐ。その姿は、まるで錬金術師が秘薬を調合するようでござった。
海の福音、舌の上に降り注ぐ
吾輩は迷わず「あご出汁ラーメン」を注文した。
そして着丼ドーンだ!!

運ばれてきた丼からは、磯の香りが立ち上る。スープの表面には、トビウオの脂がきらきらと輝いておる。一口啜れば——
「これは……海が口の中で爆発した!」
スープは、まるで日本海の荒波をそのまま凝縮したかのような力強さでござる。あごの旨みが舌の上を駆け巡り、鼻腔から脳天へと抜けていく。麺は中太のストレート、スープをからめるのに申し分ない。チャーシューは、豚というよりはむしろ海の幸とでも言うべきか、スープと見事に調和しておる。

「牛ながら、魚の出汁に目がくらむとは……」
吾輩の角が自然と震えるのを感じた。この味は、陸に住む者に海の真理を悟らせるに足る啓示でござろうか。
食後の余韻は波の如く
完食した後も、口の中には潮騒の余韻が残っておる。店主に「どうでしたか?」と聞かれ、吾輩は「海を飼い慣らした味でござる」と答えておいた。外に出ると、新宿の喧騒が嘘のように感じられる。高層ビルの谷間を吹き抜ける風が、さっきまで味わっていた海の香りを運んでくるようでござった。
モウモウである。あご出汁ラーメンなどというものは、牛の食文化には縁遠いものであったが、この「たかはし」の一碗は、吾輩の美食観を根底から覆すに十分でござった。
次回は、陸の牛としての矜持を取り戻すため、ステーキでも食いに行く所存ではあるが——それまでに、もう一度あの海の味を確かめずにはいられそうでござる。

投稿者プロフィール

- 大富豪になっても結局食と旅
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吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。
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