【東京湾横断】京急とフェリーで巡る!久里浜から浜金谷への珍道中

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先日、主人のやつが突然

ご主人

モウモウよ、東京湾を横断せぬか!

などと、意味不明なことを言い出した。聞けば、普段の運動不足が祟り、気分転換にでも、ということらしい。我輩は日頃から主人の気まぐれに付き合わされてばかりだが、東京湾を横断と聞けば、さすがの私も耳を疑ったものである。しかし、主人の閃きは一度発動すれば止まることを知らぬ。かくして、我々と主人の珍道中は、久里浜からフェリーで房総半島の浜金谷へと向かうことと相成ったのである。

思いつきの旅路、京急に乗って

出発は午前九時、品川駅である。主人のやつは、普段の鈍重さが嘘のように、京急の赤い電車に飛び乗った。私も慣れない都会の喧騒に、少々戸惑いを覚えたものの、主人の横で大人しく座っておった。電車は快調に南へと走り、車窓からは見慣れぬ景色が次々と流れていく。まさか、こんなにも早く東京を離れることになろうとは。

久里浜駅に到着したのは午前十時。ここからフェリー乗り場まではバスが出ているはず、と主人は申しておったが、駅前のバス停で待てども待てども、その姿は見えぬ。

仕方なく、主人はグーグルマップを頼りに歩いて向かうことにしたのである。炎天下の中、日差しは容赦なく照り付け、舗装された道からは容赦なく熱気が立ち上る。アスファルトの熱さは我が蹄にもじんじんと伝わり、私は思わず舌を出してハアハアと息をした。およそ二十分、汗だくになりながらようやくたどり着いたフェリー乗り場には、すでに何人かの旅人がおり、主人のような人間もいるのだな、と妙に納得したものである。

やっと見えてきた

焦がれるフェリー、待ちぼうけの港

しかし、そこで我々を待ち受けていたのは、さらなる試練であった。到着した午前十時半の時点で、次のフェリーの出航時刻はなんと正午十五分! まさかの約一時間半待ちである。主人の顔には、明らかに「しまった」という表情が浮かんでいた。しかし、これも旅の醍醐味と割り切るしかない。

「モウモウよ、腹が減っては戦ができぬ。何か地元の美味でも探そうではないか!」と、主人は妙に前向きなことを言い出した。港の近くには、小さな売店がいくつかあり、主人はそこで「キャベツコロッケ」と「しらすジェラート」なるものを購入してきた。キャベツコロッケは、衣はサクサク、中はホクホクで、キャベツの甘みが口いっぱいに広がり、なかなか美味であった。しかし、しらすジェラートとはこれいかに。恐る恐る一口舐めてみたが、ほのかに磯の香りがするものの、意外にもさっぱりとしていて、暑さに疲れた体には心地よかった。まさに珍味である。

東京湾を渡る、悠然たる船旅

ようやく出航の時刻が近づき、我々はフェリーに乗り込んだ。白い船体が大きく揺れ、いざ出航である。

いよいよフェリーに乗り込み東京湾横断だ

デッキに出ると、心地よい潮風が頬を撫で、先ほどの暑さが嘘のようである。振り返れば、遠ざかる久里浜の街並みが小さくなっていく。そして、前方には広大な東京湾が広がり、水平線の向こうには、うっすらと房総半島の影が見えてきた。

この日は天候に恵まれ、青い空と青い海がどこまでも続き、まさに絶景であった。私は生まれて初めての船旅に、思わず目を丸くしたものである。主人のやつも、普段の眉間の皺が嘘のように伸び、遠くの景色を眺めては満足げな顔をしておった。船は白い航跡を残しながら、ゆっくりと進んでいく。カモメが我々の頭上を旋回し、その鳴き声が広大な海に響き渡る。これぞ、旅の醍醐味というものであろう。

鋸山、そして予期せぬ出会い

浜金谷港に到着した我々は、まず目指すは「鋸山ロープウェイ」である。

港からロープウェイ乗り場までは歩いてすぐの距離である。主人のやつも、フェリーでの休息が効いたのか、足取りも軽やかであった。しかし、ロープウェイ乗り場に到着し、案内板を眺めていた主人が、突然「モウモウよ、やめよう」と、またしても奇妙なことを言い出した。「ここまできといて結局行かんのんか~い!」何故行かないのかを聞けば、この日の暑さでは地獄めぐりなどできるか、という理屈である

「それよりも、あそこにいる魚の方がよほど興味深いではないか!」

主人が指差す方を見ると、港の浅瀬を二匹のクロダイが悠々と泳いでおるではないか! 主人のやつは、普段はめったに見せない童心に帰ったかのような表情で、クロダイに釘付けになっておった。地獄めぐりよりも、目の前の生き物の方が興味があるとは、なんとも主人のらしい行動である。私も、主人の興奮ぶりに釣られて、二匹のクロダイを目で追った。悠々と泳ぐ姿は、まさに海の王者といった趣である。この旅の目的が、いつの間にか「魚観察」に変わってしまった瞬間であった。

絶品の海の幸と、旅の締めくくり

結局、鋸山は断念し、我々は港近くの「金谷食堂」へと引き返した。

時刻はすでに昼時を過ぎていたが、店内は賑わっており、壁には有名人のサイン色紙がずらりと並んでおった。

なるほど、これは期待できそうである。主人は迷うことなく「海鮮丼」を注文した。値段は千九百八十円と少々値が張るが、旅の締めくくりである。そして着丼ドーンだ!!

運ばれてきた海鮮丼は、まさに海の宝石箱であった。ワカシ真鯛、目鯛、シイラなど、色とりどりの海の幸が惜しげもなく盛り付けられており、見た目にも美しい。主人は箸を手に取り、まずはワカシを一口。

「おお、これは美味い! 身が締まっていて、脂の乗りも程よい!」

続いて真鯛。

「鯛の歯ごたえがたまらぬな! 磯の香りが口いっぱいに広がる!」

そしてシイラ。

「シイラは初めて食すが、淡泊ながらも奥深い味わいがある! これは大当たりじゃ!」

主人は普段の無口さが嘘のように、興奮気味に感想を述べておった。私も思わず生唾を飲んだ。新鮮な海の幸は、まさに五臓六腑に染み渡る美味さであったに違いない。テレビロケが来るのも納得である。

食後、内房線の電車が来るまでの間、我々はお土産屋「Fish」で時間を潰すことにした。店内には、海の幸を使った加工品や、房総半島ならではの民芸品などが所狭しと並んでおった。

「モウモウよ、見てみろ、この干物! 今晩の酒の肴に良さそうではないか!」

主人は目を輝かせながら、あれこれと品定めをしておった。私は、主人のこういう無邪気な一面を見るのが好きである。結局、主人は干物と、私へのお土産にと、魚の形をした木製の置物を購入していた。

旅の終わりに思うこと

午後三時八分、ようやく電車が到着した。

揺れる車窓から、遠ざかる浜金谷の景色を眺める。君津まで行き、そこから乗り換えて一路東京を目指す。主人のやつと出かけると、いつも歩いてばかりいるような気がする。今回も、暑い中を歩き、フェリーを待ち、そして鋸山を諦めたと思ったら魚に夢中になる始末である。しかし、それもまた、旅の面白さというものであろう。計画通りにいかないことこそが、思い出に残る旅となるのだ。私は、主人の気まぐれに付き合わされながらも、また次の旅を密かに楽しみにしているのである。

投稿者プロフィール

モウモウ
モウモウ大富豪になっても結局食と旅
吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。

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