
ご主人おい、モウモウ。新聞見たか?トランプがグリーンランド欲しいって言ってるぞ
吾輩は牛である。ご主人が朝から興奮している。吾輩は草を食みながら、人間というものの滑稽さを噛みしめる。
「あれだろ?また注目集めたいだけだろ?」とご主人。
吾輩は内心で首を横に振る。違うのだ、ご主人。これは本気なのだ。
記事によれば、トランプの首席補佐官スーザン・ワイルズという人が、トランプのことを「アルコール依存症のような性格」と言ったそうだ。お酒は飲まないが、何かに依存せずにはいられない性格だという。依存症の人は、現実の痛みから逃げるために、リスクを冒し続ける。
トランプが感じている痛みとは何か。それは国内での人気の低さだ。2026年1月時点で、トランプの支持率は低く、良くなる気配もない。政治がうまくいっていないのだ。
そこで彼は海外で「すごいこと」をして、その痛みを忘れようとしている。多くのアメリカ大統領は、任期の終わりごろになると外交に力を入れる。しかしトランプの場合は特別だ。彼は、アメリカの裁判所の命令は守らなきゃいけないが、国際的なルールは破りやすいことに気づいたのだ。
実際、2026年1月3日に、トランプはベネズエラのマドゥロ大統領を拉致するよう命令した。理由は「アメリカで逮捕状が出ているから」だそうだ。まるで西部劇の保安官が犯人を追いかけるように、アメリカ軍をベネズエラに送り込んだ。そして成功した。
「へえ、そりゃすごいな」とご主人。
吾輩は思う。すごいのではない。恐ろしいのだ。軍事力で勝っていれば何でもできる、とトランプは学んでしまった。
マドゥロ拉致の後、トランプはグリーンランドについて繰り返し話し始めた。「アメリカには必要だ」と何度も言っている。デンマークの首相は「グリーンランドを欲しがるなんて理屈に合わない」と反論したが、トランプは聞く耳を持たない。
トランプはデンマークを馬鹿にして、「デンマークがグリーンランドの安全のためにやったことは、犬ぞりを1台増やしただけだ」と言った。そして、クリスマス前にルイジアナ州知事のジェフ・ランドリーという人を「グリーンランド担当特使」に任命した。この人は「グリーンランドをアメリカの一部にするために頑張ります」と言っている。
さらに、副大統領のJ・D・バンスを、頼まれてもいないのにグリーンランドに送り込んで、調査させた。
「ただのパフォーマンスじゃないのか?」とご主人。
記事は皮肉を込めて言っている。「トランプがただ注目を浴びたいだけだと思う人は、ベネズエラの首都カラカスで休暇を過ごす予約をするといい」と。つまり、マドゥロの例が示すように、トランプは本気なのだ。
吾輩が見るに、これは単純な話だ。国内で人気がない。政治がうまくいかない。だから海外で「勝利」を手に入れて、国民を喜ばせたい。昔から権力者がよくやる手だ。人間は本当に変わらない。吾輩は草を食べる。草はいつも同じ味がする。人間の愚かさもいつも同じだ。
グリーンランドを狙う二つの理由



でもさ、モウモウ。なんでグリーンランドなんだ?寒いし、氷ばっかりだろ?
ご主人の疑問はもっともだ。吾輩は反芻しながら、記事の内容を思い出す。
記事によれば、理由は二つある。第一に、簡単に手に入るからだ。
グリーンランドなら、ベネズエラの時と同じように、トランプがフロリダの自宅マール・ア・ラーゴに作った「作戦室」から、モニターを見ながら併合できる。作戦は1、2時間で終わり、アメリカ兵に死者は出ないだろう。
なぜトランプがそんなことをしたいか。それは、オバマ元大統領が羨ましいからだ。2011年、オバマはテロリストのウサマ・ビンラディンを殺害する作戦を、作戦室のモニターで見守っていた。その写真は歴史的な一枚として有名になった。トランプも同じような「かっこいい写真」が欲しいのだ。
デンマークは平和主義ではないが、アメリカという超大国に戦いを挑むのは無理だ。つまり、グリーンランド併合は「楽勝」なのである。



なるほどな。弱い者いじめってことか
吾輩は思う。まさにその通り。強い者が弱い者を狙う。動物の世界でも同じだが、動物は生きるために狩りをする。トランプは生きるためではなく、見栄のために狩りをしようとしている。
第二の理由は、大金が儲かるからだ。トランプの友人たち、特にリバタリアン(自由至上主義者)と呼ばれる人々は、ずっと前からグリーンランドに目をつけていた。
リバタリアンとは、政府の規制を嫌い、自由な経済活動を最重視する人々だ。ピーター・ティールという大富豪がいる(あのpaypalの人だ)。この人は、未開発の土地に暗号資産(ビットコインなどの仮想通貨)を使った「ネットワーク国家」を作りたいと考えている。そして、グリーンランドがその候補地になっている。ティールは、グリーンランドで国家を作ろうとしているスタートアップ企業「プラクシス」に投資している。
トランプ政権の駐デンマーク大使ケン・ハウリーは、ティールやイーロン・マスクと一緒にペイパル(オンライン決済サービス)を作った仲間だ。シリコンバレーの億万長者たちの多くが、グリーンランドを「新しいビジネスの場所」として狙っている。
「火星とは違って、グリーンランドを占領することは不可能ではない」と記事は皮肉っている。イーロン・マスクは火星に行きたがっているが、火星はまだ遠い。グリーンランドなら今すぐ手に入る。



つまり、金持ちたちが儲けるために、国を奪おうってことか?
とご主人。
吾輩は思う。その通りだ。グリーンランドには資源がたくさんある。レアメタル(希少金属)や石油、天然ガスなどだ。さらに、既存の法律や税制から逃れた「自由な国」を作れば、大富豪たちは好き放題できる。
しかし、グリーンランドには約5万6000人の人が住んでいる。そのほとんどはイヌイットという先住民族だ。彼らには独自の文化と言語がある。しかし、トランプや大富豪たちの計算に、彼らの存在は入っていない。
吾輩は牧場で生きる牛として、人間に所有されている。だから分かる。力のある者は、力のない者を「物」として扱う。土地も、資源も、そこに住む人々も、すべて「物」だ。これが人間の世界だ。
吾輩は草を食む。草は黙って食べられる。イヌイットの人々は黙っていない。しかし、声は届かない。
NATOという同盟が壊れる危機



でもさ、モウモウ。グリーンランドってデンマークのものだろ?アメリカが勝手に取ったら、ヨーロッパの国々が怒るんじゃないか?
ご主人の疑問は鋭い。しかし、記事が指摘するのは、むしろ逆の恐ろしい話だ。
グリーンランドを取ることは、リバタリアンだけでなく、MAGA(米国を再び偉大に:Make America Great Againってやつだ)運動を支持する人々も喜ぶ。なぜなら、NATO(北大西洋条約機構)という同盟を一気に壊せるからだ。
NATOとは何か。これは1949年にできた軍事同盟で、現在31カ国が加盟している。中心にいるのはアメリカだ。NATOの最も重要なルールは「第5条」というものだ。これは「加盟国の1国が攻撃されたら、全加盟国が攻撃されたと見なして、みんなで守る」というルールだ。
デンマークもNATO加盟国だ。だから、もしアメリカがグリーンランドを攻撃したら、デンマークは第5条を発動できる。「アメリカに攻撃されたから、みんな助けて」と言えるわけだ。



じゃあ、ヨーロッパの国々が助けに来るんじゃないか?
とご主人。
吾輩は思う。来ない。来られない。なぜなら、NATOのリーダーはアメリカ自身だからだ。
アメリカがデンマークを攻撃したとき、誰がデンマークを守るのか。アメリカと戦うのか。それは不可能だ。だから、どの国も助けに来ない。デンマークが諦めて「仕方ない」と言っても、結果は同じだ。いずれにせよ、NATOの第5条は意味を失う。



つまり、アメリカがルールを破ったら、ルールそのものが無くなるってことか
その通りだ。これは「警察署長が泥棒になったら、誰が逮捕するのか」という問題だ。答えは「誰も逮捕できない」だ。
トランプの説明は、法律ではなく地理に基づくだろうと記事は予測する。グリーンランドの一部は東半球にあるが、大部分は西半球にある。トランプは「これは西半球の問題だから、アメリカの問題だ」と主張するだろう。
これは「モンロー主義」という古い考え方だ。1823年、アメリカのモンロー大統領は「ヨーロッパは西半球(南北アメリカ)に口出しするな。我々もヨーロッパに口出ししない」と宣言した。トランプはこれを持ち出して、西半球でのアメリカの行動を正当化するかもしれない。
記事はさらに、トランプの関心がグリーンランドだけにとどまらないと指摘する。ベネズエラの次に、コロンビアのコカ畑や、メキシコの麻薬工場を攻撃しても驚かない。キューバも狙われる可能性がある。
トランプはカナダも「アメリカの51番目の州にしたい」と言っていたが、カナダの首相がジャスティン・トルドーからマーク・カーニーに変わってから、あまり言わなくなった。カナダは後回しだ。グリーンランドが最優先なのだ。
「なんか、昔の帝国主義みたいだな」とご主人。
吾輩は思う。まさに。19世紀、強い国が弱い国を次々と植民地にした。第二次世界大戦の後、人類は「もうそんなことはやめよう」と約束した。国連を作り、国際法を作り、NATOのような同盟を作った。すべては「力で他国を奪ってはいけない」というルールを守るためだった。
しかし、そのルールを作った張本人のアメリカが、今そのルールを破ろうとしている。ルールを守る警察官が、ルールを破る。これではルールは意味を失う。
吾輩は牧場の柵の中で草を食む。柵は吾輩を守り、同時に縛る。人間が作った国際ルールも同じだ。ルールは平和を守るが、強い者がルールを破れば、ルールは紙切れになる。
追い詰められるほど危険になるトランプ



でもさ、モウモウ。アメリカの国内でトランプを止める人はいないのか?
ご主人の疑問は正しい。しかし、記事が描く状況は厳しい。
アメリカ国内でトランプに反対する人々は、「トランプは追い詰められれば追い詰められるほど、危険なことをする」と見ている。トランプの無法な行動は、国内の政治状況が悪くなるほど激しくなる、と記事は指摘する。
では、トランプが直面している国内の圧力とは何か。
第一に、2026年11月の中間選挙で、民主党が下院(国会の一部)を取り戻すと予想されている。下院を失えば、トランプは予算を通すのも難しくなる。政治がやりにくくなるのだ。
第二に、「エプスタイン文書」という問題がある。ジェフリー・エプスタインという大金持ちが性犯罪で有名になり、多くの著名人との関係が疑われている。彼に関する文書を「隠さずに全部公開しろ」という圧力が高まっているが、トランプは「絶対に公開しない」と言っている。法律では公開が義務付けられているのに、それを阻止しようとしている印象を与えている。これはイメージが悪い。
第三に、最高裁判所がトランプの関税政策を取り消す可能性がある。トランプは外国からの輸入品に高い税金(関税)をかける政策を進めているが、これが違法だと判断されるかもしれない。
アメリカ国内で軍隊を使おうとすれば、裁判所が止める。トランプはこれまで、裁判所の命令にはだいたい従ってきた。つまり、国内では司法(裁判所)がブレーキになっている。
「じゃあ、大丈夫じゃないか」とご主人。
違う。国内ではブレーキがあるが、海外にはない。
記事は重要な点を指摘する。「軍隊を海外に送ることを止められる裁判所は存在しない」と。つまり、国内では法律に縛られるが、海外では自由に軍事力を使える。この違いが、トランプの行動を決めているのだ。
さらに、トランプの周りには「やめた方がいい」と言う人がいない。側近は皆、トランプに忠実な人ばかりだ。ブレーキのない車は暴走する。



つまり、国内で困ったことがあると、海外で暴れるってことか
正確にはそうだ。これを心理学では「補償行動」という。ある場所で失敗すると、別の場所で成功しようとする。学校で叱られた子供が、家で弟をいじめるようなものだ。
記事の最後は警告で終わる。「ショッキングな要素、遂行される任務、そして金儲けの種としてのグリーンランドを、トランプはいつでも利用できる。その衝動は今後も膨らむ一方だろう」と。
吾輩が見るに、これは非常に危険だ。追い詰められた権力者は最も危険な存在だ。失うものがなくなったと感じたとき、人は何でもする。歴史はその例で満ちている。
吾輩は草を食む。草は静かだ。嵐が来ても、草は地面にしがみつき、嵐が過ぎるのを待つ。しかし、人間は違う。嵐を起こす側になろうとする。そして、その嵐で他の人間を巻き込む。
これは世界の大きな転換点



結局、モウモウ。グリーンランド問題って、何がそんなに重要なんだ?
ご主人は新聞を置いた。吾輩は最後の考察をまとめる。
グリーンランド問題は、単なる土地の奪い合いではない。これは第二次世界大戦後に人類が作った「ルール」が終わるかもしれない、という問題だ。
1945年、第二次世界大戦が終わった。世界中が戦争の悲惨さを知った。だから人類は約束した。「もう力で他国を侵略するのはやめよう」と。そのために国連を作り、国際法を作り、NATOのような同盟を作った。
このルールの核心は「力による現状変更の禁止」だ。つまり、軍事力を使って他国の領土を奪ってはいけない、ということだ。このルールのおかげで、第二次世界大戦のような大規模な戦争は起きなかった(小さな戦争は起きたが)。
しかし、トランプはこのルールを破ろうとしている。ベネズエラでマドゥロを拉致し、今度はグリーンランドを狙っている。なぜ誰も止められないのか。アメリカが世界最強の軍事力を持っているからだ。
「力は正義」という原則が復活しようとしている。人類は何千年もこの原則の下で生きてきた。強い者が弱い者を支配し、大国が小国を併合し、帝国が植民地を搾取した。20世紀にようやく、人類はこの原則を克服しようとした。しかし今、その原則が戻ってきている。



でも、アメリカがやったら、他の国もやるよな
その通りだ。もしアメリカがグリーンランドを併合して、誰も止めなければ、それは他の大国への許可証になる。ロシアはウクライナで「アメリカもやっているじゃないか」と言うだろう。中国は台湾で同じことを言うだろう。
グリーンランド問題は試金石なのだ。もしこれが許されれば、「力による現状変更」が再び許されることになる。戦後の国際秩序は終わる。新しい帝国主義の時代が始まる。
記事が描くトランプは、依存症患者だ。彼は国内の痛みから逃れるために、海外での「快感」を求める。マドゥロ拉致の成功は、彼に快感をもたらした。次はグリーンランドだ。そしてその次は?コロンビアか、メキシコか、キューバか。
依存症は進行性の病気だ。最初は小さな刺激で満足していた人が、やがてより大きな刺激を求めるようになる。トランプの場合、ベネズエラがグリーンランドへの野心を膨らませた。グリーンランドを手に入れたら、次は何を狙うのか。
吾輩は牛である。吾輩に人間社会を変える力はない。吾輩はただ草を食み、反芻し、考える。しかし、吾輩でも分かる。人間は今、非常に危険な道を歩いている。
「難しい話だな」とご主人は言った。
難しくない。実は単純な話だ。強い者が弱い者を狙っている。ルールを作った者がルールを破ろうとしている。そして、誰も止められない。これは牧場でも同じだ。牧場主が柵を壊せば、柵は意味を失う。
人間は「文明」「民主主義」「人権」という言葉を好む。しかし、力の前では、それらの言葉は無力だ。トランプは民主的に選ばれた。しかし、彼は民主主義の原則を踏みにじる。彼は「アメリカを再び偉大に」と叫ぶ。しかし、その偉大さは他国の主権を奪うことで達成される。
吾輩は牧場の柵の中で、人間たちを見つめる。彼らは短期的な利益のために、長期的な秩序を犠牲にする。トランプは支持率を上げるために、国際秩序を壊す。彼の支持者は喝采するだろう。しかし、その代償は計り知れない。
吾輩は草を食む。草はいつも同じ味がする。しかし、人間の世界は変わりつつある。良い方向か、悪い方向か。吾輩には分からない。ただ一つ確かなのは、歴史は繰り返されるということだ。そして今回も、おそらく例外ではないだろう。
吾輩は牛である。名前はまだない。しかし、吾輩は見ている。すべてを見ている。
投稿者プロフィール






