うまさNo.1だ!異端のとんかつ:大門「とんかつ いわい」の茎わさび醤油アンサンブル

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吾輩はこれまで数多のトンカツを食してきた。吾輩の同胞の親戚を食すというのはいささか、気分的には良くないのは多分にあるのだが、いかんせん稀代の食通を気取っている限りは避けては通れない道なのだ。

我の先に道あり、我の後ろに道はなし。なのだ。もちろん吾輩が考え付いたものではない。

有吉が「生涯最高のとんかつだ」と叫んだこの店や

最高の腕前の職人が奏でる豚肉のハーモニーが唸らせるこの店や

林SFPを使用した黄金のトンカツのこの店も

昭和気質残るコスパの求道者が集うこの店も、いろいろ?行ってみた

もちろん、まだまだ行きたいお店はMountainのようにあるのだが、今回なんとYouTube大学を運営しているオリラジのあっちゃんがお勧めする、とんかつの『いわい』に狙いを定めた。今ではその動画はメンバーシップ限定で見れないのだが、以前見た記憶を辿ると、どうやら茎わさび醤油でトンカツを食すと言う非常に珍しいお店であると、とんと記憶しているのだ。

さて一体どの程度のうまさなのかを今回レポートしてみたいのだ。

目次

いざ入店

店頭では、接客係の人らしき人が愛想よく席まで案内してくれた。彼の笑顔は、まるで「異端者よ、ようこそ」と囁くかのようだ。吾輩のような反芻動物が、揚げ物の聖域に踏み入ることを、彼は少しも不思議がらない。人間という種の寛容さか、それとも無関心か。

席に着き、ロースかつ定食120gか、160g化で大いに迷う。その差は¥400なのだが、¥2500なのか、¥2900なのかは、このインフレのご時世では死活問題であると断言できよう。

結局最近のグルメでの散財を鑑みて120g¥2500に決定した。

モウモウ

醤油でとんかつ……それは可能なのか?

知らない人にとっては素朴な疑問であろう。吾輩の脳内では、既にソース派と醤油派の形而上学的論争が勃発していた。

いかんせん、どうにも醤油でとんかつなんて合うのか?と濃霧のように疑いかかっていたので、一口食べてみて、こりゃダメだ、と思ったら塩で食べようと最初からきめてかかっていた。塩という名の「不変の真理」への逃げ道を、吾輩は用意周到に確保していたのだ。これぞ、哲学者の臆病さである。

【いわい】という店の変革を辿る。

「とんかつ いわい」は、単に生まれた店ではない。変革と独立という、人間的な意志が介在した歴史を持つ。

  • 前身(のもと家):
    • 店主である岩井氏は、2012年頃に浅草の「豚珍館」に店主として雇われていたが、一年後に閉店。
    • その再起を図るため、この大門の地で2014年に「のもと家」として再出発した。
  • 店名変更(とんかつ いわいへ):
    • 2022年3月に、旧店名「のもと家」から「とんかつ いわい」へ店名変更(リブランド)し、完全独立を果たした。
    • 評判は変わらず高く、食べログの「とんかつ 百名店」に度々選出されている。

【吾輩の考察】 「のもと家」から「いわい」への変更は、単なる屋号の変化ではない。それは、雇われの身からの精神的・経営的な「独立」であり、店主・岩井氏が自身の名を冠することで、「とんかつ」という芸術に対する自己の責任と哲学をより明確にした行為と見受けられる。

こだわりの製法と豚肉についての考察

この店のとんかつは、その素材と、食べ方の「異端性」に最大のウリがある。

A. 厳選された豚肉

  • 銘柄: 鹿児島県産の「六白黒豚(ろっぱくくろぶた)」を使用している。
    • 六白黒豚は、鼻の先、尾の先、四肢の先が白くなっていることから名付けられた、希少な豚。
  • 肉質: さつまいもを飼料として肥育されているため、上質な脂に甘みがあるのが特徴。

B. 独自の食べ方:茎わさび醤油

  • 一般的にソースや塩で食されるとんかつに、あえて「茎わさび」と「鹿児島醤油」という組み合わせを提案しているのが、この店のオリジナルスタイル。
  • 醤油は、鹿児島の老舗であるサクラカネヨの「こいくち甘露」を使用。この甘口の醤油が、豚肉の脂の甘みと茎わさびの清涼感と見事に調和する。
  • 食べ方は、小皿に醤油を注ぎ、とんかつの切り口に茎わさびをのせて、醤油につけて食すのが推奨されている。

C. 揚げ方へのこだわり

  • 豚肉の良さを最大限に活かすため、パン粉の選定から揚げ方までこだわっている。
  • 揚げ油は、香りとコクを引き出すために2種のラードをブレンド
  • 揚げ方は、最初は低温のラードでじっくり火を通し、終盤は高温で仕上げるという二段階の調理法をとっている。
  • さらに、配膳までの時間、客が写真を撮る時間まで逆算し、最も最適な状態で提供することを心掛けている。

【吾輩の考察】 六白黒豚という**「甘美な肉質」に対し、茎わさびと甘露醤油という「異質な清涼感」をぶつける。これは、単なる調味料の組み合わせではない。肉の持つ本質を、あえて反対の属性(わさびの辛味と醤油のしょっぱさ)で際立たせるという、哲学的な弁証法の実践である。また、揚げの時間を秒単位で逆算する姿勢は、とんかつに対する職人の時間の概念**への絶対的な献身を示している。


ついにその姿をあらわした

待つこと大よそ二十分。この時間は、油という煉獄で豚肉が己の本質と対峙する儀式の時間である。同時に、吾輩の懐疑論が濃霧のように立ち込める時間でもある。

そしてついにきた『着丼ドーンだ!!』

豪華絢爛なロースかつ定食120g

運ばれてきたのは、百二十グラムのロースカツ。初めてなので茎わさび醬油のやり方を教わる。

まぁつまり、醤油をつけて、その上にワサビを乗っければOKなのだ。なんとも単純明快な儀式である。しかし、単純さこそが、時に最も深遠な真理を宿すものだ。

卓上には様々なアイテムが置いてあるので、いざとなったらこれに頼るのも一手だろう。

吾輩は箸を取り、一切れを口に運ぶ。ところが、どうだろう。

「…オーマイガー!!なんじゃこりゃ!?」

こんなうまいトンカツは初めてと言ってもいい位うまくて驚いた。肉もこだわりの肉で、柔らかくて、かみ切れる。吾輩のような草食動物ですら、この肉の柔らかさには感嘆せざるを得ない。そして、醤油と茎わさびの清冽なる調和が、豚の脂の甘美さを際立たせる。これは対立ではない。止揚だ。ヘーゲル的弁証法が、この一皿の上で展開されているのだ!

「吾輩は間違っていた」

そう、吾輩は己の偏見という名の檻に囚われていたのだ。醤油とわさびは、ソースという絶対王政に対する革命軍であり、豚肉の本質を裸にする啓蒙の光であった。茎わさびの清涼感は、醤油の濃厚さを批判的に検証し、そして肯定する。これこそが、カントの言う「批判」の真髄ではないか。

脇を固めるキャラも秀逸だ

結局最後まで醤油でトンカツを食した。塩の出番は来なかった。逃げ道は、結局使われることなく、吾輩の臆病さだけが浮き彫りになった。豚汁もうまかった。おかわりが百円で行けるのだが、トンカツ百二十グラムにしたにもかかわらず、結構おなかいっぱいで、おかわりできなかったのだ。最初百二十グラムだと足りないかと懸念したが、百六十グラムでなくても満足だった。この満足感は、量ではなく質によってもたらされたものだ。少なくとも、吾輩の胃袋はそう主張している。

最後お会計だ。ここはキャッシュオンリーなので注意だ。現金という名の、古き良き価値交換の儀式。カード社会という名の抽象化を拒む、この店の頑なさもまた、一つの哲学なのかもしれない。

吾輩は接客係に進言した

モウモウ

うむ、実に見事な醤油とわさびのアンサンブルであった。この様なトンカツは食したことがないので、いたく感動する次第である

すると彼は、「あ、大将に言ってあげてください」と、あくまでも殿様に忠義を尽くす家臣のようであった。

「吾輩の感動は、創造主たる大将にこそ捧げられるべきものなのか。感想という名の貨幣は、直接生産者に手渡されねばならぬという、この店の経済システム。興味深い」

吾輩は店を後にしながら、こう思った。醤油とわさびという異端の組み合わせは、既成概念という壁を破壊する力を持つ。そして、吾輩のような懐疑論者ですら、一口で改宗させる説得力がある。これは単なるとんかつではない。これは、哲学である。

投稿者プロフィール

モウモウ
モウモウ大富豪になっても結局食と旅
吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。

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