【新宿】ブルックリンパーラー(Brooklyn Parlor)一人体験記!ブルーノートが贈る「音楽・本・食」の迷宮へ。ご褒美ランチ&ハンバーガーの真実

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吾輩は国家試験を受けた。それは人間たちが作り出した、知性の格付けという名の残酷な儀式だ。吾輩のような牛からすれば、紙束に並んだ記号に一喜一憂する様は、牧草の等級にこだわる農家の執念に似て見えなくもない。だが、この数ヶ月、吾輩の脳という名の第五の胃袋は、参考書という名の硬い飼料を反芻し続け、疲弊しきっていた。試験という名の荒野を駆け抜けた今、必要なのは単なる栄養ではない。「緩和」を超えた「祝祭」である。

 そんな頑張った自分へのご褒美として向かった先は、新宿マルイアネックス地下1階。都会のコンクリートの深淵に潜む、その名も「ブルックリンパーラー」

 時刻は夕方4:00。昼食と夕食の境界線が曖昧になる、実存の空白時間だ。

 地下へと続く階段を降りれば、そこは新宿の喧騒を浄化した異界が広がっていた。2009年、ジャズの名門「ブルーノート・ジャパン」が満を持してプロデュースしたこの空間は、単なる飲食店ではない。音楽、本、食事が「三位一体」となり、NYのブルックリンにあるような、無骨ながらも洗練された「自由」を体現した場所である。

 一歩足を踏み入れれば、100席はあろうかという広大な空間に圧倒される。間接照明が織りなす陰影は、まさに大人の隠れ家。しかし、哲学的な牛として率直に言わせてもらえば、この照度は「読書」という孤独な知的営みには全く不向きだ。活字を追おうとすれば、網膜が闇との闘争を強いられるだろう。ここを支配しているのは「静寂」ではなく「ムード」なのだ。友人や恋人と、互いの顔を淡い光の中で美化しながら語り合う――それこそが、この空間に対する正しき解法、すなわち最適解なのだろう。

 中央を見渡せば、4人掛けのテーブルが堂々と鎮座している。そこでは若者たちが「キャッほーい」という、吾輩の辞書には存在しない軽薄かつ幸福な擬音語が似合うノリで、人生の春を謳歌しているではないか。その輝きを前に、吾輩は一瞬、気圧された。一人で来た自分は分不相応なのではないか? これは、かつて市ヶ谷の地で味わった、あの学歴と選民思想が交差する地獄からくる「市ヶ谷のトラウマ」と「呪い」の再発だろうか。

 だが、心配は無用であった。

 壁面を見れば、そこには「ボッチ陰キャ用」……もとい、自律した個の時間を愛する紳士淑女のための、おひとり様用シートが用意されている。驚いたことに、そこには吾輩と同じく、このお洒落な迷宮で孤独を楽しんでいる「ボッチCafe」の先駆者たちが3人も、平然とした顔でそれぞれの宇宙に没入していた。彼らの背中は語っている。「群れるのは羊のすることだ、我々は孤独を喰らうのだ」と。

 壁を埋め尽くす2,500冊以上の本、そしてブルーノート譲りの音響設備から流れるジャズ。ここは、文化という名の香辛料で味付けされた贅沢な空洞だ。

 さて、注文は迷わない。吾輩の疲弊した細胞が、タンパク質とカフェインの暴力的な抱擁を求めている。

  • ハンバーガー:¥1980
  • ホットコーヒー:¥700

 自分へのご褒美(という名の自己正当化)としては、妥当な投資だろう。  キッチンから響く調理の音を、ジャズの旋律の一部として咀嚼しながら待つ。

 そして、ついに運命の瞬間が訪れた。

「着丼ドーンだ!!」

ブルックリンハンバーガー

 

 目の前に現れたのは、皿という名の舞台の上にそびえ立つ肉の摩天楼。ナイフで切り分けて食べるスタイルのようだ。さっそく入刀してみる。おっと、バンズは意外と硬派な仕上がりだ。ナイフを押し返すその弾力は、安易な軟弱さを拒絶するブルックリンの魂の表れか。しかし、ひとたび口に運べば、肉汁という名の慈悲が溢れ出す。ジューシーだ。これまでの試験勉強の乾きが、この一撃で潤っていく。

豪華絢爛

 付け合わせには、黄金色に輝くポテトと、二つのピクルス。ポテトは徹底的にカリカリに揚げられている。吾輩は思う。この「カリカリ派」と「ホクホク派」の対立は、おそらくカントの定言命法と同じくらい解決不能なパラドックスだ。個人的には、大地の包容力を感じる「ホクホク」の方が好みではあるが、この空間のジャジーなノリには、このクリスピーな「カリカリ」という攻撃性こそがふさわしいのかもしれない。

カリカリポテトだ

 そして、コーヒー。  一口啜れば、酸味が全速力で脳を駆け抜ける。まるでマンデリンの荒野を疾走しているような、エッジの効いた酸味だ。かつての吾輩なら、この尖った個性を愛しただろう。しかし、年を重ね、反芻の回数が増えるにつれ、最近は角の取れた「まろやかさ」や、世の苦渋を煮詰めたような「苦み」を好むようになっている。これもまた、人それぞれ、牛それぞれの歴史だ。

苦みよりも酸味コーヒー

 完食。

 入店前は「一人で入るにはハードルが高すぎるのではないか」と、蹄を震わせていたが、一度座ってしまえばそこは極上の安息地だった。周囲の喧騒は、心地よいBGMへと解体され、吾輩は久々に深い沈思に耽ることができた。長居をしても追い出される気配はなく、空間そのものが「どうぞ、貴方の時間を消費してください」と微笑みかけてくる。

 確かに、毎日ここに来るのは、吾輩のような一介の哲学牛には贅沢が過ぎる。コストとベネフィットを天秤にかければ、普段使いには二の足を踏むだろう。しかし、何らかの記念日、あるいは今回のような「戦い」の後のご褒美――いわゆる「ハレの日」に使う場所としては、これ以上の舞台装置はない。

 店を出て、新宿アネックスを後にする。  地上はまだ、喧騒という名のカオスに満ちていたが、吾輩の四つの胃袋には、ブルックリンの自由な風と、あの酸味の効いたコーヒーの記憶がしっかりと収まっていた。

 さて、次はどの国家試験に落ちて……いや、受かって、ここへ戻ってくることにしようか。

モウモウ

後日談であるが、この1か月後に合格発表があり、今回受験した国家試験に無事一回で合格したことをここに報告するとしよう

投稿者プロフィール

モウモウ
モウモウ大富豪になっても結局食と旅
吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。

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