【東京駅】東京煮干し らーめん玉|マロン君と探求する「銀色の深淵」と煮干しの狂気

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迷宮の再訪、あるいは「斑鳩」からの越境

人間という生き物は、一度成功体験を味わうと、それを基準点(ベンチマーク)としてさらなる刺激を求める強欲な性質を持っている。吾輩の同行者、マロン君もその例外ではない。

先日、我々は東京駅の地下に広がるあの「斑鳩」を訪れた。その洗練された魚介豚骨の調和に、彼は丁寧な言葉遣いでいたく感激していた。しかし、一度火がついた探求者の情熱は、穏やかな感動だけでは鎮まらないらしい。

「吾輩さん、前回の斑鳩は実に見事な均衡(バランス)でした。ですが、今日はもっと……こう、素材の暴力性をダイレクトに享受したい気分なのです。海の恵みを、その銀色の輝きを、もっと濃密に感じられる場所へ参りましょう」

そう言って彼が吾輩を導いたのは、同じく東京ラーメンストリートの奥深くに鎮座する『東京煮干し らーめん玉(ぎょく)』であった。丁寧な物腰の裏に潜む、こてこての魚介系への渇望。人間とは、なんと矛盾に満ちた生き物か。

『東京煮干し らーめん玉』の系譜と輪郭

煮干し。それは海が乾燥という名の試練を経て、その旨味を極限まで凝縮させた小さな銀色のミイラである。この店は、その死せる小魚たちを再び熱きスープの中で蘇生させる降霊術の館といえる。

まずは、この店の事実(FACT)を整理しておこう。

項目内容
ルーツ2008年、神奈川県川崎市で創業した「めんりゅう(現・玉)」が始まり。
創業主玉川正也氏。独学でラーメン作りを極めた情熱の男。
東京駅進出2018年、東京ラーメンストリートにオープン。
最大の特徴「鶏」の濃厚なコクと、圧倒的な量の「煮干し」を合わせた超濃厚スープ。
独自の武器店内に設置された削り機で、その都度削られる「とろけるかつお節」。

マロン君は券売機の前で、まるで聖書を読み解く神学者のような厳かさで「特製煮干しらーめん」を選択した。吾輩もまた、四肢を折りたたみ、カウンターという名の最前線へと身を投じる。

銀色の津波、そして咆哮

マロン君は、美しく整えられたカウンターの質感を愛でながら、静かに語り始めた。

「見てください、吾輩さん。この店内に漂う香りを。これは単なる煮干しの匂いではありません。数千、数万というカタクチイワシたちが、その命の輝きを最後の一滴までスープに捧げた結果、生じた『芳香の地層』ですよ。特にこの削りたてのかつお節……。空気に触れた瞬間の酸化すら許さないという、徹底した鮮度への執着に敬意を表さずにはいられません」

マロン君の丁寧な解説は、空腹の胃袋には少々高尚すぎるが、彼がこれほどまでに熱弁を振るうのは、この先に待つ「こてこて」への期待の裏返しだろう。

そして、その瞬間がやってきた。厨房の奥から、煮干しの怨念と恩恵が入り混じった液体が運ばれてくる。

『着丼ドーンだ!!』

濃厚という名の哲学、あるいはアイロニー

眼前に現れたのは、もはや液体と呼ぶには躊躇われるほどの粘度を持った、褐色の小宇宙であった。その上には、薄く、繊細に削られたかつお節が、スープの熱気で踊っている。まるで、死してなお、海へ帰ろうとあがいているかのように。

マロン君は、うやうやしくレンゲを手に取った。

マロン君

失礼して……。おお、これは……。一口含んだ瞬間に、脳裏に瀬戸内の荒波が押し寄せてくるようです。動物系の濃厚な土台があるからこそ、煮干しのエグみすらもが『個性』として昇華されています。このドロリとした質感、まさに私が求めていた『こてこての真理』です

吾輩はそれを静かに見守る。

人間は、なぜこれほどまでに「濃さ」を求めるのか。薄いものは「誠実」と呼ばれ、濃いものは「贅沢」と呼ばれる。だが、この煮干しスープの濃度は、もはや贅沢を通り越して、一種の「執念」に近い。

かつお節を麺に絡めて啜るマロン君。

マロン君

素晴らしい。削りたてのかつお節が、スープの塩味をまろやかに包み込み、それでいて香りを数倍に増幅させています。この麺の歯切れの良さも、計算され尽くした必然と言えるでしょう。斑鳩が『静』の傑作だとすれば、この玉は間違いなく『動』、あるいは『爆発』の傑作です

吾輩は考察する。

数多の魚たちが煮詰められ、一坏の器に凝縮される。これは、生命の濃縮還元だ。牛である吾輩が、海に住まう魚たちのエッセンスを、東京の地下で、丁寧語を操る青年と共に摂取している。この状況自体が、高度に発達した文明が産み落とした、最大のアイロニーではないか。

かつて草原を駆け抜けていた先祖たちは、まさか子孫が地下室で「銀色の小魚の泥」を愛でることになるとは夢にも思わなかっただろう。


終わりに:胃袋に宿る深海

完食したマロン君の顔には、聖者のような満足感が漂っていた。先ほどまでの「飢えた探求者」の面影はない。

マロン君

いやはや、感服いたしました。東京駅という場所は、煮干しの深淵さえも飲み込んでしまうのですね。次は、もっと別の方向性……例えば、鶏の旨味を極限まで抽出した店なども検討せねばなりません。吾輩さん、またお付き合いいただけますね?

丁寧な言葉で、さらなる強欲を宣言する彼。

吾輩は、重くなった胃袋を抱えながら、静かに鼻を鳴らす。

『東京煮干し らーめん玉』。

そこは、煮干しという名の小さな戦士たちが、濃厚な鶏の海で玉砕し、その魂を一杯の麺に宿らせる聖域であった。東京駅の地下を歩く群衆の中で、吾輩たちだけが、その内側に「銀色の深海」を抱えて歩き出す。

さて、マロン君。

君の探求心に終わりがないように、吾輩の胃袋にもまた、限界などという野暮な概念は存在しないのだよ。ただし、次はもう少し、牛に優しい「草」を感じさせる店でも良いのではないかな?

……などという吾輩の嘆きは、駅の喧騒にかき消されていくのであった。

投稿者プロフィール

モウモウ
モウモウ大富豪になっても結局食と旅
吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。

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