【実食】東京にある麻婆豆腐専門店の実力を計測しに、マロン君と降臨した日

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吾輩は四つの胃袋を持ち、本来ならば広大な牧草地で青々とした草を反芻し、穏やかな生を全うするはずの存在だ。しかし、どういう運命のいたずらか、吾輩はコンクリートジャングル・東京の神田というアスファルトの牧場に立っている。そしてあろうことか、本日は「麻婆豆腐」という、植物と動物のミンチが織りなす業の深い料理を食そうとしているのである。

今回、吾輩の隣で几帳面に歩調を合わせているのは、友人のマロン君だ。彼はラーメンの探求者であり、麺とスープの宇宙を永遠に彷徨い続ける求道者である。そんな彼がなぜ麻婆豆腐の店に同行しているのか。それは、この店が単なる中華料理の枠を超えた、ある種の「イデア」を提示しているからに他ならない。

マロン君

麻婆豆腐専門店とは、これまた貴重な機会なので、是非とも行きたいですな

まずは、我々が足を踏み入れたこの「麻婆豆腐TOKYO 神田本店」という空間について、吾輩の脳内データベース(第3胃袋あたりに格納されている)からFACTを開示しよう。

【麻婆豆腐TOKYO 神田本店の歴史と特徴】

  • オープン日 | 2019年12月3日。師走の冷風が吹きすさぶ中、神田司町に産声を上げた
  • 特徴・ウリ | 伝統的な四川の枠にとらわれず、中国料理以外の食材や技法も大胆に取り入れた「4種の独創的な麻婆豆腐」を提供 4種のバリエーション 黒(王道の東京麻婆豆腐)、白(うま塩麻婆豆腐)、赤(酸辣麻婆豆腐)、黄(チーズカレー麻婆豆腐)という、まるで戦隊モノのような色彩美
  • システム | ランチタイムはご飯の増量が無料。卓上にはミル付きの「花椒」が完備されるセルフスパイスシステムを採用。
  • ライス大盛は最初は無料

吾輩は定番の「黒 東京麻婆豆腐(昼1100円)」を、マロン君は欲張りにも「黒、白の二色定食(1400円)」を選択した。

待つこと数分。厨房から立ち上る熱気とスパイスの香りがピークに達したその時、それはやってきた。麻婆豆腐を信じて長らく経営を行っているのはまさにシュールレアリスムの極みである。

『着丼ドーンだ!!』

視界を満たすのは、マグマのごとき黒い海。そしてマロン君の御膳には、黒と白という陰陽太極図を彷彿とさせる二つの宇宙が広がっている。無料の大盛で頼んだライスは、見事なまでにこんもりと盛られており、まるで雪化粧をした富士山、あるいは豊かな牧草地の小高い丘のようで、非常にいい感じだ。炭水化物の山脈を前に、吾輩の第一胃袋が歓喜の雄叫びを上げている。

マロン君が、背筋をピンと伸ばし、割り箸を割る。彼はラーメン探求者らしく、まずは白(うま塩麻婆豆腐)をじっと見つめ、蓮華で一口すくった。

マロン君

これは実に興味深いアプローチです。この白の方ですが、麻婆豆腐という概念を覆すかのように、辛味は一切ございません。むしろ、オリーブオイルとニンニクの風味が豆腐と見事に調和しておりまして……そうですね、表現するならば、まるで『アヒージョ』のような感覚でございます。麺の代わりに豆腐が泳ぐ、地中海のスープとでも申しましょうか

アヒージョ……? 吾輩は静かに目を閉じ、反芻する。アヒージョとは、ニンニクと油の熱狂的なる海。我々牛族の歴史において、スペインといえば赤い布に突進させられる闘牛の悲劇の舞台である。マロン君は今、神田の小さなテーブルの上で地中海の風を感じているようだが、吾輩に言わせれば、麻婆豆腐をアヒージョと形容するのは、草食動物に「このステーキ、まるで新鮮な牧草のようだね」と言うような、シュールレアリスムの極みである。なんか、わかるような、わからないような……。いや、マロン君の真面目すぎる比喩は、時に言語の限界を超越するのだ。吾輩は黙って、彼の探求心に心の中で拍手を送った。

さて、吾輩も自らの「黒」と対峙せねばなるまい。レンゲで一口すくい、鼻孔を抜ける香りを楽しみながら、ゆっくりと咀嚼する。……ほう。なるほど。ファーストインパクトとしての暴力的な辛さはない。むしろ、旨味が先行して舌の上で優雅なワルツを踊っている。しかし、だ。二口、三口と食べ進めていくにつれ、毛穴という毛穴からうっすらと汗が滲み出てくるではないか。

これはまさに「茹でガエルの法則」ならぬ「茹で牛の法則」である。最初は快適な温度だと思っていた風呂が、気づけば熱湯になっているかのように、穏やかな顔をして忍び寄るスパイスの策略。痛覚を刺激するのではなく、体の芯から燃焼を促すようなこの絶妙なチューニングは、現代社会における見えないストレス(あるいはステルス値上げ)のように、じわじわと吾輩の細胞を侵食していく。だが、それがいい。この発汗作用こそが、生きているという実感のメタファーなのだから。

こんもりと盛られた白米が、黒いマグマを中和し、そしてまたマグマを欲する無限ループへと吾輩を誘う。花椒をカリカリと挽きかければ、痺れという名の電気信号が脳内を駆け巡り、四つの胃袋はフル稼働でこの幸福を消化しにかかる。

実に旨かった。人間たちは、豆腐と肉の細切れをこれほどまでに複雑で哲学的な一皿に昇華させたのか。牛である吾輩も脱帽せざるを得ない。

マロン君は未だに

マロン君

白のアヒージョ感と、黒の醤油ベースのコントラストが、まるで塩ラーメンと醤油ラーメンの連食をしているようで……

とブツブツと分析を続けている。彼の辞書には、全ての事象をラーメンに変換するフィルターが搭載されているらしい。


吾輩は最後に残った水を一気に飲み干し、静かに決意した。次回は、黄色い彼奴……「黄 チーズカレー麻婆豆腐(昼1200円)」をためしたいところだ。麻婆でありながらカレーであり、さらにチーズを纏うという、もはやアイデンティティの崩壊すら辞さないそのキメラ的料理は、存在意義に悩む吾輩という牛にとって、良き対話の相手となるに違いない。モウ、考えるだけで胃袋が鳴るというものである。

投稿者プロフィール

モウモウ
モウモウ大富豪になっても結局食と旅
吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。

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