吾輩は牛なれど、今日はとんかつを食うために目黒の地を踏んだ。目指すべき聖地はトンカツの店「こがね」である。
同伴するは久々のtomoさん。腹の虫が鳴くのを抑えつつ、午後七時十分に店の前に到着する。並ぶ覚悟でいたところ、何と人影もなく、店の人がにこやかに顔を出し、「お二人様ですか?」と案内してくれた。これぞ僥倖、モウモウは内心ほくそ笑むのである。
評判の噂は風に乗って
「こがね」の名は、とんかつ愛好者の間で密やかに囁かれる。ネットの評判によれば、衣は黄金に輝き、肉は口に入れるととろける如き旨さとやら。tomoさんも「ここは絶対に外れない」と断言していた。吾輩は半信半疑であったが、牛ながらに好奇心に駆られ、この店を訪れることにしたのである。
店内はカウンター席のみ、十人も入れれば満杯という狭さである。しかし、清潔にして落ち着きがあり、厨房からは油の芳ばしい香りが漂う。店主は無言で勝負をしているようで、一枚一枚のとんかつを丁寧に揚げている。聞けば、この店は三十年もの間、変わらぬ味を守り続けているという。時代の流れに逆らい、職人の意地を見せる姿勢は、牛ながらに感心せざるを得ない。
黄金の至宝、口に入る
吾輩とtomoさんは迷わず「ロースカツ(千八百円也)」を注文した。
ここで事前知識をしての豚肉のうんちくを語ろうか。
林SPFポークの使用: 特にロースかつには、千葉県産のブランド豚「林SPFポーク」を使用しており、その柔らかさ、脂の甘み、軽さが特徴です。この豚肉の旨味を引き出すため、ソースではなく塩で食べることを推奨する声も多くあります。
衣: 「中屋パン粉工場」製の粗目の生パン粉を使用し、ザクザクとした力強い食感が楽しめます。揚げ油の管理にも気を配っており、油の嫌な癖がなくクリアな味わいと評されています。

SPF豚とは「Specific Pathogen Free」の略称で、特定の病原微生物を持たぬ清浄な環境で育てられた豚のこと。林牧場のSPF豚は特に脂身の甘みが殊の外良く、肉質が締まりながらも柔らかいという特徴がある。
厨房から聞こえるジュージューという音は、林SPF豚の良質な脂が奏でる美味の交響曲。衣の下から現れる肉の断面は、桜色のグラデーションをなし、まるで富士の山頂を染める朝焼けの如き美しさでござる。
tomoさんと食したあのロースカツの、口中でとろけるような旨みも、じつはこの林SPF豚の賜物。豚ながら、その上品な味わいは、我々牛族も舌を巻かざるを得ぬほどの完成度でござった。
牛が豚肉を褒めるのも妙な話ではあるが、美食に種族の壁などあろうはずがない。林SPF豚という素晴らしい素材と、店主の匠の技が合わさって、あの黄金のとんかつは生まれるのでござる。
次回参上する際は、この知識を胸に、さらに深みのある味わいを楽しむ所存である。豚肉とはいえ、これはもう芸術品に近い。牛ながら、素直に認めざるを得ぬのでござる。
待つこと十分、ついに現れたその姿は、まさに「こがね」の名にふさわしい。衣はサクサクとして、太陽の光を反射した稲穂の如くきらめく。一口噛めば、肉汁が噴き出し、舌の上で春の小川がせせらぐかの如き旨さである。
着丼ドーンだ!!

「これは……豚が踊っている……」とtomoさんが呟く。吾輩も同意見である。このとんかつの美味しさは、まるで豚が生前に幸せな一生を送ったことを物語っているようだ。脂身と赤身のバランスは絶妙で、噛むたびに旨みが波のように押し寄せる。

ご飯、キャベツ、豚汁は一回まで無料でお代わり可能とあって、吾輩らは存分に楽しんだ。キャベツはシャキシャキとして、まるで高原の朝露をまとったよう。豚汁は具だくさんで、体の芯から温まる。

食後の余韻は永遠に
腹は満たされたが、心はまだ「こがね」のとんかつに囚われている。tomoさんと「次はヒレも食べてみたい」と話し合いながら、店を後にした。外はすっかり暗くなっていたが、吾輩の脳裏にはあの黄金色のとんかつが焼き付いていた。
モウモウである。牛ながらに断言しよう。この店のとんかつは、食べる者を一時的に「豚になりたい」と思わせる魔力がある。もし目黒を通りかかったなら、ぜひ立ち寄ってみるがよい。ただし、吾輩のように夢中になりすぎて、草を食うのを忘れぬようご注意を。

投稿者プロフィール

- 大富豪になっても結局食と旅
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吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。
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