吾輩は牛である。今回は、この吾輩が憧れのサンライズ出雲号に乗車したという、まさに牛の生涯において革命的な出来事について語ろうではないか。まさに「モー」っと素晴らしい旅路が待っているのである。

主人は1ヶ月もの有給をとって、ついこの間青森に日帰り旅に行ったばかりだ。マグロ丼を食べるためだけに新幹線で日帰りで青森までいく行動力は見上げたものがある
ついに手に入った黄金のチケット
平日の夏、この吾輩のご主人はついにやってのけた。長年憧れていたサンライズ出雲のチケットを手に入れたのである。これまでは発売と同時に、まさに「毎日が駅弁祭り」のような騒ぎで即完売となり、まったく手が出なかった。吾輩とご主人は何度もJRのシステムと格闘したものだ。
「今回こそは!」とご主人が意気込んでいた姿を、吾輩は草を噛みながら静観していた。人間の執念とは恐ろしいものである。まるで牛が新鮮な若草を求めて遠くの牧場まで歩くような、そんな熱意を感じた。そして遂に、発売開始10分で完売という伝説のチケットを、奇跡的に確保できたのである。
吾輩はB寝台シングルの2階、ご主人はシングルの1階という配置だ。牛が2階で寝るというのも、考えてみれば奇妙な話である。まるでハイジのおじいさんの屋根裏部屋で眠る山羊のような気分だ。しかし、これこそが旅の醍醐味というものではないか。
モウモウB寝台のソロとは¥1000しか変わらないし、シングルの方が少しだけ広いのだ。しればらシングル一択だろう
サンライズ出雲号の時刻表という名の運命の旅路
サンライズ出雲は東京発21:50で、横浜、熱海、沼津、富士、静岡、浜松、大阪、三ノ宮、姫路、岡山、倉敷、備中高梁、新見、米子、安来、松江、宍道を経て、出雲市に9:58に到着するという、まさに日本列島縦断の壮大なルートである。
【サンライズ出雲号 時刻表】
東京 21:50 発
横浜 22:09
熱海 23:25
沼津 23:46
富士 0:03
静岡 0:25
浜松 1:13
大阪 5:30
三ノ宮 5:53
姫路 6:27
岡山 7:27
倉敷 7:47
備中高梁 8:36
新見 9:03
米子 9:29
安来 9:40
松江 9:48
宍道 9:55
出雲市 9:58 着
この時刻表を眺めながら、吾輩は深い感慨にふけった。名古屋や大阪などの主要都市をスっ飛ばすという、まさに常識を覆すルートである。これはまるで、牧場から牧場へと直線的に移動する牛の本能を体現したような設計ではないか。無駄を省き、目的地への最短ルートを突き進む。実に牛らしい、合理的な発想である。
東京駅「祭」での駅弁調達という重要なミッション
当日、まず最初に向かったのは東京駅にある駅弁屋「祭」である。なぜなら、サンライズ出雲には車内販売が無いからだ。これは重要な情報である。車内販売が無いということは、乗車前の駅弁調達がマストということなのだ。


全国各地の有名駅弁や人気駅弁に加えて、オリジナル駅弁や期間限定駅弁などを150種類以上取り揃え、まるで「毎日が駅弁祭り」のような華やかで活気溢れる駅弁専門店である「祭」に足を踏み入れると、吾輩の嗅覚は一気に覚醒した。150種類以上の駅弁が放つ香りの波動が、牛の鋭敏な鼻腔を直撃したのである。




「日本一の駅弁屋」と多くのお客さまに認知していただけるよう、毎日200種類を超える駅弁を用意しているという、この店の本気度が伝わってくる。まさに駅弁界のレヴィアタンとでも言うべき存在だ。牛である吾輩からすれば、これほどまでに多様な食物が一堂に会する光景は、まるで天国の牧草地を見るようなものである。
ご主人は優柔不断にも、あれやこれやと悩んでいる。吾輩は冷静に、かつ的確に選択を行った。やまゆり牛肉弁当である。牛が牛肉弁当を選ぶということの皮肉性について、哲学的な問題提起をしたいところだが、まぁ、それは後日の課題としよう。一方、ご主人は小田原提灯風の弁当に落ち着いた。提灯弁当とは、実に風情のある名前である。
いよいよサンライズ出雲の入構!牛の心臓は限界突破
そして、ついにその時が来た。サンライズ出雲号の入構である。吾輩の心臓は、まるで搾乳機のポンプのように激しく脈打った。ドキドキが止まらない。これが牛の心臓発作でなければ良いのだが。
ホームに現れたサンライズ出雲の赤とクリームのツートンカラーは、まさに夜空に浮かぶ流星のような美しさだった。


14両編成の長大な車体が、まるで青い龍のようにゆっくりとホームに滑り込んでくる。吾輩は思わず「モー」と声を漏らしそうになった。これぞまさに、鉄道ファンでなくとも心を奪われる瞬間である。吾輩は9号車、主人は14号車という離ればなれなのだった。
乗客たちが次々と乗り込んでいく光景を眺めながら、吾輩は人間社会の奇妙さについて考察していた。皆、同じような青春18きっぷやジパング倶楽部のような表情で、期待と興奮に満ちている。そして、誰もが小さな子供のような顔をしているのである。これが旅というものの魔力なのだろうか。
21:50、運命の出発!駅弁という名の至福
ついに東京駅を21:50に出発した。



吾輩は2階のB寝台シングルという、牛にとっては実に狭い空間に身を置いている
しかし、この狭さがかえって胎内回帰のような安心感を与えてくれる。まるで母牛の腹の中にいるような、そんな温かい感覚だ。






まずは駅弁を食することにした。やまゆり牛肉弁当を開けた瞬間、牛肉の芳醇な香りが狭い個室に充満した。




牛が牛肉を食べるという、この究極のカニバリズムについて考えながら、吾輩は静かに咀嚼を続けた。味は実に絶品である。これが同胞の味なのかと思うと、複雑な気持ちになる。しかし、食物連鎖という自然の摂理からすれば、これもまた当然の行為なのである。
その後、吾輩とご主人はデッキで落ち合った。デッキから見える夜景を眺めながら、明日の計画を立てた。出雲市駅に到着したら、まずバスで出雲大社へ行き参拝。その後、荒木屋で出雲そばを食べ、タクシーで出雲市駅へ向かい、特急やくもに乗り、一路岡山へ。岡山城、後楽園を観光して、岡山グルメを堪能し、新幹線で東京へ戻るという、実に綿密かつ野心的な計画である。
| 🕐 時間 | 📍 場所 | 🎯 アクション | 🚗 移動手段 | ✨ ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 夜 | 🛳️ デッキ | 夜景を眺めながら作戦会議 | – | 旅の始まり! |
| 朝 | 🚉 出雲市駅 | 到着! | 🚌 バス | いざ、神々の国へ |
| 午前 | ⛩️ 出雲大社 | 参拝・パワーチャージ | 🚌 バス | 縁結びの聖地で願掛け |
| 昼 | 🍜 荒木屋 | 出雲そばでエネルギー補給 | 徒歩 | 本場の味を堪能! |
| 午後 | 🚉 出雲市駅 | 次なる目的地へ | 🚖 タクシー | 快適移動 |
| 午後〜夕方 | 🚃 特急やくも | 一路岡山へGO! | 🚃 特急 | 車窓の景色も楽しみ |
| 夕方 | 🏰 岡山城 | 漆黒の美しい天守閣 | 🚶♂️ 徒歩 | 烏城の威厳を感じて |
| 夕方 | 🌸 後楽園 | 日本三名園で癒しタイム | 🚶♂️ 徒歩 | 絶景庭園でリラックス |
| 夜 | 🍱 岡山グルメ | 地元の美味しいものを堪能 | 🚶♂️ 徒歩 | 旅の締めくくり! |
| 夜〜 | 🚄 新幹線 | 東京へ帰還 | 🚄 新幹線 | お疲れさまでした! |
この旅の最大の焦点は蕎麦屋の後にタクシーに素早く乗り込んで特急やくもの時間にギリギリ間に合うかどうかにかかっている。この特急が1本遅れると岡山見物はできなくなるのだ。
牛の吾輩から見れば、人間の旅行計画というものは実に興味深い。あれもこれもと欲張って、まるで牧場の全ての草を一日で食べ尽くそうとするような、そんな貪欲さを感じる。しかし、それこそが人生の醍醐味というものなのかもしれない。
車内の様子と心境の変化
最初、新橋、品川などを通り過ぎる時には、窓の外に見える帰りの通勤ラッシュの光景に優越感を感じた。サラリーマンたちが満員電車に押し込まれている一方で、吾輩たちは優雅に寝台列車でゆったりとくつろいでいる。これぞまさに、格差社会の縮図である。牛の吾輩ですら、この瞬間ばかりは人間の上級階級になったような錯覚を覚えた。


だんだん東京を離れるにつれて、窓の外の灯りが徐々に少なくなっていく。都市の喧騒から解放され、日本列島の深部へと向かっているという実感が湧いてくる。夜がやってきて、車窓に映るのは暗闇ばかりになった。これはまさに、文明から野生へと回帰していく過程なのではないか。牛の本能が、徐々に覚醒してくるのを感じる。
車内は引き戸式のカーテンがあり、それを閉めると完全な闇に近い状態になる。二階なので、振動はさほど気にならない。これは幸いだった。牛は基本的に地面に近いところで生活する動物なので、高いところは少し不安になるのだ。しかし、この程度の揺れなら、まるで母牛に揺り籠で揺すられているような心地よさすら感じる。
しかし、豊橋あたりまで中々寝付けなかった。これは興奮のためなのか、それとも普段とは異なる環境のためなのか。牛の睡眠パターンというものは、案外デリケートなものなのである。窓の外を眺めながら、様々なことを考えた。人生とは何か、旅とは何か、牛とは何か。哲学的な思索に耽っているうちに、いつの間にか意識が朦朧としてきた。
夜明けと岡山での連結切り離し
次に目を覚ましたのは大阪だった。時計を見ると朝の5時30分。
「おはよう!もう大阪だよ」とご主人の声が下から聞こえた。車窓から見える大阪の朝の風景について、ご主人が語った。
「まだ薄暗いけど、もう街が動き始めてるね。大都市の朝の活気って感じがするよ」吾輩は少し寝ぼけながらも、この光景を眺めていた。
「6時頃に岡山に着くんだけど、そこでサンライズ讃岐との連結切り離しがあるんだ。鉄道ファンには絶対見逃せないイベントなんだよ」しかし、眠気に負けて見に行かなかった。
「僕も眠すぎて見に行けなかった。でもこの作業音、聞こえるでしょう?」確かに、列車が一時停止し、何やら作業の音が聞こえ、そして再び動き出した。
「面白いよね。一つの列車が二つに分かれるなんて、まるで細胞分裂みたいだ」
ご主人の例えが意外に的確で、吾輩は「モー」と感心の声を上げた。
「君も同じことを思ってたのか。やっぱり牛でも科学的な思考ができるんだね」岡山に到着し、ここでサンライズ讃岐との連結切り離しが行われる。これは鉄道ファンにとっては見逃せないイベントなのだが、眠すぎて見に行かなかった。後で考えてみれば、これは実にもったいないことをしたものだ。牛の怠惰な性格が災いしたというべきか。
しかし、車内にいながらにしてその瞬間を感じることはできた。列車が一時停止し、何やら作業の音が聞こえ、そして再び動き出す。まるで細胞分裂のように、一つだった列車が二つに分かれていく。これは生物学的に見ても興味深い現象である。無機物である列車が、まるで生物のような振る舞いを見せるのだから。
山陰路へ、そして宍道湖の出現
そして、ついに鳥取に入り、島根に来た。山陰路の風景は、それまでの本州太平洋側とは明らかに異なる趣を見せている。より静謐で、より深い緑に覆われている。まさに日本の原風景とでも言うべき美しさだ。
そして現れたのが宍道湖である。その大きさに吾輩は驚いた。湖としては相当な規模だ。調べてみると、日本の湖の大きさランキングで7位に入っているとのことである。さらに、中海も合わせるとかなりの大きさになる。


【日本の湖 面積ランキング(ベスト7)】
- 琵琶湖(滋賀県)- 670.4km²
- 霞ヶ浦(茨城県)- 220.0km²
- サロマ湖(北海道)- 151.8km²
- 猪苗代湖(福島県)- 103.3km²
- 中海(島根県・鳥取県)- 86.8km²
- 屈斜路湖(北海道)- 79.7km²
- 宍道湖(島根県)- 79.2km²
宍道湖と中海を合わせると166km²にもなる。これは相当な規模である。車窓から眺める宍道湖の水面は、朝日を受けて金色に輝いている。まるで神々しいまでの美しさだ。古来より「神々の国」と称される出雲の地にふさわしい光景である。
牛の吾輩から見ると、この広大な水面は実に印象深い。普段、陸上で草を食む生活をしている身としては、これほどまでに広い水域というものは非日常そのものだ。まるで異世界に迷い込んだような感覚すら覚える。
ついに出雲市駅到着!神々の国への第一歩


朝9時58分、ついに出雲市駅に到着した。約12時間の長旅が終わったのである。吾輩の体は列車の振動をまだ記憶しており、少しふらつく感じがする。しかし、それもまた旅の醍醐味というものだろう。
出雲市駅に降り立った瞬間、空気が違うことを実感した。東京の乾燥した空気とは明らかに異なる、しっとりとした湿り気を含んだ空気だ。そして、どこか神秘的な雰囲気を漂わせている。これが「神々の国」出雲の空気なのかと、吾輩は深く感じ入った。


駅の構内には「ようこそ神話のふるさと出雲へ」という看板が掲げられている。神話の舞台に立っているのだという実感が、じわじわと湧き上がってくる。牛である吾輩にとっても、これは特別な瞬間だ。日本古来の神々と動物たちの関わりについて、様々な想像が膨らんでくる。
予定通りバスに乗り込み、いよいよ出雲大社へ向かう。バスの車窓から見える出雲の街並みは、どこか時が止まったような静寂さを漂わせている。現代的な建物と古い町家が混在しながらも、全体として調和のとれた美しい風景を作り出している。
吾輩は座席に座りながら、これから訪れる出雲大社への期待で胸が高鳴るのを感じていた。日本最古級の神社の一つとされる出雲大社で、牛である自分は何を感じるのだろうか。神々と動物の関係について、何か新たな洞察を得ることができるのだろうか。
バスは静かに出雲大社へと向かっていく。車窓の風景を眺めながら、吾輩は旅の前半を振り返っていた。サンライズ出雲での一夜は、まさに夢のような体験だった。そして、これから始まる出雲での体験が、この旅をさらに特別なものにしてくれるに違いない。
【前編終了】
後編では、出雲大社での神秘的な体験、荒木屋での予定外のハプニング、代替店「かねや」での絶品出雲そば、特急やくもでの岡山移動、岡山城と後楽園の観光、そして岡山グルメの堪能まで、牛の視点で詳細にレポートいたします。お楽しみに!
投稿者プロフィール


- 大富豪になっても結局食と旅
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吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。
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