【代々木ラーメン実食レポ】『麺恋処 いそじ』|「自家製麺と濃厚魚介豚骨」の深淵

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緩やかな下り坂、あるいは文明への下降

代々木という街は、新宿という巨大な胃袋に隣接しながら、どこか奇妙な静寂を湛えている。吾輩は今、ご主人の歩幅に合わせて代々木駅から緩やかな坂を下っている。ご主人はといえば、スマートフォンの画面を指でなぞりながら、「東京ルッチ」というサイトで見たんだ、ここはどうしても行かねばならぬ」と、まるで啓示を受けた預言者のような顔で呟いている。

人間という生き物は、ネット上の文字情報を神託のように信じ、わざわざ重力に従って坂を下る。その先に、小麦粉と脂の結合体が待っているというだけで。

坂を下るという行為は、エントロピーが増大する宇宙の摂理に忠実だ。吾輩のような四肢で踏みしめる者にとって、この傾斜は単なる位置エネルギーの消費ではなく、期待という名の重圧が蹄にかかる儀式のようなものである。目指すは『麺恋処 いそじ』。その名は、どこか古風で、それでいて情念を感じさせる。

継承される血統と、自家製麺という名の哲学

この店には、語られるべき歴史がある。 2007年に産声を上げたこの場所は、かつて大森にあった伝説の名店『まるいち』の流れを汲んでいる。さらに遡れば、東池袋大勝軒という巨大な源流に行き着くわけだ。人間界における「家系」や「血統」という概念は、吾輩たち牛の世界におけるA5ランクの証明書にも似て、その品質を担保する記号として機能している。

しかし、いそじが単なる模倣に留まらないのは、その「自家製麺」への執着にある。 店内に鎮座する製麺機は、沈黙を守りながらも圧倒的な存在感を放っている。毎日、その日の気温や湿度を読み解き、小麦と対話する。それはもはや調理ではなく、錬金術に近い。

ご主人は行列に並びながら、

ご主人

今日はつけめんかな、それとも中華そばかな

と、人生の重大な岐路に立たされた哲学者のような顔をしている。

真面目な探求者である彼の言葉は、常に正しい。だが、正しすぎる言葉は、空腹の胃袋には少々硬すぎる。

顕現する混沌、そして着丼

カウンターに座り、厨房の規律正しさを眺める。ご主人は隣で、給水機の水を三杯も飲み干している。天然な彼は、期待が高まると体内水分を枯渇させる癖がある。

職人の手によって、美しく整えられた麺が器に盛られ、茶褐色のスープが注がれる。その瞬間、世界から雑音が消えた。

『着丼ドーンだ!!』

目の前に現れたのは、視覚的な暴力ではなく、調和のとれた小宇宙であった。

まずはスープを一口。 ……ほう。これは、舌の上で繰り広げられる濃厚な弁証法だ。 豚骨と鶏ガラの力強いコク(正)に対し、魚介の華やかな香りとキレ(反対)がぶつかり合い、そして「いそじ」という独自の調和(合)へと昇華されている。

そして、自家製麺。 中太のストレート麺は、小麦の香りを強く主張し、スープを適度に乗せて喉を通り過ぎていく。この弾力、このコシ。これはもはや、咀嚼という名の対話である。

ご主人はといえば、「あふぅ、あふぅ」と、言語を喪失した原始人のような声を上げながら、無心に麺を啜っている。先ほどまでの哲学的な煩悶はどこへ行ったのか。結局、人間は美味しいものの前では、ただの「胃袋を持つ管」に成り下がるのだ。


終わりに:坂を上る勇気

食後、吾輩たちは再びあの坂を上らなければならない。 重力に逆らうという行為は、文明を維持するためのコストだ。

ご主人は、満腹感からくる幸福な痴呆状態で、空を見上げている。 「いそじ……。良い名前だね。僕もいつか、あんな風に、誰かの恋の対象になるようなラーメンになりたいな」

何を言っているのか、牛である吾輩にはさっぱり理解できないが、彼が幸せそうなので良しとしよう。 『麺恋処 いそじ』。 代々木の坂の下にあるその場所は、ただのラーメン屋ではない。そこは、自家製麺という名の哲学を噛み締め、濃厚なスープによって魂の欠落を埋める、迷える子羊(あるいは牛と人間)のための聖域であった。

さて、ご主人。 次はどのサイトの情報を信じて、吾輩を歩かせるつもりかな?

投稿者プロフィール

モウモウ
モウモウ大富豪になっても結局食と旅
吾輩は牛である。 名はモウモウである。 なんでも自由ヶ丘というハイカラな街のきらびやかなショーウィンドーの中でもうもう泣いていたことだけはとんと記憶している。

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